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もし、地球が東から西に自転したとしたら、世界は現状とどのように異なっていたと考えられるか、いくつかの視点から考察せよ。


東京大学理科Ⅰ類2014年度 外国学校卒業生特別選考小論文問題より

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     地球の自転の回転方向は公転の方向と同じで、さらにその公転方向は太陽の自転方向と同じだ。

     また、太陽系の惑星はすべて太陽の自転方向と同じ向きに公転しており、金星以外の岩石惑星はすべて、自転の方向と公転の方向が、太陽の自転方向に一致している。

     つまり、太陽をはじめとする太陽系の大部分の天体は、約46億年前の太陽系形成時にガスや塵が渦になりはじめた向きに公転かつ自転している。

     もし地球の自転方向が今と逆になっているとするなら、約46億年前の太陽系形成時にガスや塵が渦になりはじめる段階で、すでに回転方向が逆になっていたと考えるのが妥当だろう。

     その逆回転する太陽系の中で地球が形成され、その地球上に生命体が誕生し、いずれ人間にまで進化することになるが、逆回転する地球上で進化した人間の脳は、きっと左側に「右脳の機能をもった脳」があり、右側に「左脳の機能をもった脳」があるのではないかと思う。そしてその脳は、右手のことを「左手」と呼び、左手のことを「右手」と呼び、太陽が昇る西のことを「東」と呼ぶだろう。


     20世紀になり、物理学は「反物質」の存在を明らかにしたが、本問題の問いは「もし世界が反物質でできていたら、現状とどのように異なっていたと考えられるか」という問いに似ているように思う。

     SF物語にはすべてが反物質でできたパラレルワールドの話がよくあり、そこには姿形がまったく同じですべて反物質からなる「反自分」がいたりするのだが、そんなパラレルワールドの中にこそ、東から西に自転する地球が存在するのかもしれない。

     本当に「反物質世界」が存在するなら、はたして本当にそんな鏡の世界のようになっているだろうか。もしそうでないとすれば、どんな世界だろうか。それは通常の「物質世界」に暮らす私たち人間にとって人知を超えた存在なのではなかろうか。

     西から東に自転する通常の地球上で暮らす私たち人間にとって、反対方向に自転する地球も、【すべて反対で脳も反対なら、『反対の反対』で結局は全く同じこと】という単純な鏡のような存在ではなく、想像をはるかに超えた世界になっているような気がする。

     初期の宇宙には、物質と反物質がほぼ同数存在していたが、物質に比べ反物質の寿命がほんのわずかに短いため、長い時間を経る中で反物質はすべて消滅し、現在は物質だけの世界になった。

     同じように、地球が反対方向に自転する場合と通常の方向に自転する場合と比べたとき、何かほんのわずかな違いがあれば、長い時間を経て、現在の地球に決定的な影響を与えている可能性もあり得る。

     たとえば現在、地球上のあらゆる生物のDNAはすべて右巻き螺旋で、左巻き螺旋のDNAは存在しない。この理由として次のような仮説を立てみる。

     ――物質だけしかないこの宇宙も、初期宇宙では物質と反物質がほぼ同数あったように、最初のDNAが誕生したころは、右巻き左巻き両方のDNAが存在した。その後長い時間を経る中で、地磁気によるごく微小な作用によって、右巻き螺旋のDNAだけになった――

     反対方向に自転する場合は、地球内部にある鉄・ニッケルの液体の流れ方も現在の地球とは異なるので、発生する地磁気も現在とは異なる。ここでこの仮説を適用すれば、その結果、左巻き螺旋のDNAだけの世界になっていたかもしれない。そのとき、地球上にどんな生物がいるのか、とても興味深い。

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